ayanologはてな館

主に東京の東側で暮らしている私の日々を、ごはんやおやつの話を中心につづります。ayanoのblogなのでayanolog。夏の間はかき氷専門ブログ「トーキョーウジキントキ」もやってます。2013年10月に、はてなDiaryからHatena Blogへ引っ越してきました。

植田正治「写真の作法」

3連休の初日は、なんだか最近しょっちゅう通っている気がする恵比寿の東京都写真美術館にて、『植田正治:写真の作法 〜僕たちはいつも植田正治が必要なんだ!〜』を観に行ってきました。もう、ついに「友の会」に入っちゃいましたよ。写美主催の企画展・常設展がみられるほか、結構いろんな美術館の入場料が割り引きになり、しかも写美のカフェのコーヒー&紅茶は200円引きです(笑)

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さて本題の植田正治。「ueda-cho(植田調)」と言って海外で通じるくらい有名な写真家だそうなのですが、私は今年の夏に初めて知りました。同じく写美で今年の夏頃にやっていた企画展「写真はものの見方をどのように変えてきたか 第3部 −再生−」というのが、戦中・戦後の日本の写真家12人を取り上げ、彼らの写真を10点前後ずつ展示するというもので、12人の中で最も印象が深かったのが彼の写真だったんですよね。なんというかとてもストレートに、「この写真、好き!もっとたくさん見たい!」と思った、それが植田正治の写真でした。ちなみにこのとき展示されていたのは、パンフレットにも採用されている砂丘シリーズの写真が中心。

ところでこの企画展、どうしてこんなタイトルなんだろうと思ったら、彼の著作に「植田正治 私の写真作法」というのがあるためらしい。彼の最初期の作品から晩年までを相当数網羅しており、タイトル通り、植田正治の写真作法を満喫できる企画展になっています。

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最初期の写真は、町の風景やそこにいる人々を撮ったものが多く、なんとも素朴なテイストです。でも、電柱や木を写した写真などに、彼の独特の構図感覚が垣間見えたりして面白い。あと、全体的にこころもち右肩下がりで、イマイチ水平が取れてないんですよねえ。その辺のアバウトさも好きだ(笑)

そして有名な「砂丘シリーズ」。鳥取砂丘に家族を配して撮影した作品群で、上の写真の女性は彼の夫人であります。波打つ砂丘、白い雲、青い海、そして斜めのラインや水平のラインを生かした斬新な構図がとても印象的。やっぱりいいなあ…。

彼は地元鳥取からほとんど出ることなく、生涯“アマチュアとして”写真を撮り続けたのだそうです。そのせいなのかどうかは分からないけど、写真から伝わってくる「遊び心」がなんとも素敵。「おーい、○○君、もうちょっと右に立ってー。そうそう。あ、××ちゃん、ちょっとそこに座ってみてー」なんて言いながら写真を撮ってたんだろうなあ、などと撮影風景を想像していると、何とも楽しくなってきます。いいなあ、いいなあ〜。

彼が生きていた時代はリアリズム全盛期だったそうで、そういう意味で「演出写真」である彼の作風は王道ではなかったのかもしれません。同じく作り込み系という分類(そんな分類があるのかは分からないけど)で行くと、やはり最近見た横須賀功光「光と鬼」とかを思い出してしまうのですが、緻密に計算し尽くされ、作り込まれた「プロの広告写真」である横須賀氏と比べると、植田写真の作り込み方は全然ベクトルが違う感じ。上にも書きましたが「遊び心」「アマチュアリズム」が、なんともいえず、いい!のです。写真を撮るときに彼が感じたのであろう楽しさが、見ているこちらまで伝わってくるんですよね。

晩年のカラー写真シリーズも展示されていました。サルバトール・ダリの絵に通じるような、ぶっとびぶりやありえない構図がこれも面白かった。いやー、いいわぁ、やっぱり好きだわ、植田写真。

写美の3階全部を使って展示しているのですが、展示点数も多いし、ボリューム感満点の企画展です。写真の一つ一つから、作者の気持ちがずんずんこちらに伝わってきて、心がおぼれそう。全作品を丹念に見おわる前に疲れちゃったので、再度観に行ってきます!なお、会期は2/5まで。