田所美恵子「針穴写真展」
15日の続きの話。朝からタイフェスに繰り出していた私。途中で代々木公園を抜け出して、銀座一丁目駅を降りて目の前のポーラギャラリーへ。目的は、SCRIPT友達にして浜ちゃん友達でもある、hirisさんがオススメしてた、田所美恵子さんの「針穴写真展」。
パリの風景を写したピンホール写真、
すごく、すごく、すっごくよかった!
一番いいな〜と思ったのが、奥に写っている凱旋門の写真。次に好きなのが、手前の絵はがきで、カフェのテーブルに置いて撮った作品です。
…で。
普段私は一眼レフデジカメとか、レンジファインダーのカメラで写真を撮っているんですが、私にとって「写真を撮る行為」っていうのは「切り取る」ことなんですよね。
「時間を切り取る」「風景を切り取る」…どうやって切り取るか、そればかり考えて撮っているような気がします。
でも、田所さんの写真は違う。切り取るんじゃなくて、「閉じこめる」ように見えるのです。一定の時間を、ある風景を、一枚のフィルムの中に閉じこめたのが彼女の作品。
普通の写真は、本来動いている風景であったり、時間の一瞬を止めて、その点を見ているんだと思うけど、この写真は「点」じゃないなあ、という気がしたのでした。
人の眼は普段、一瞬一瞬を連続して動画として見ているから、一瞬を切り取った写真を見ても不思議さは感じないんだけど、ある一定の長さを持った時間を閉じこめることで、人の眼が見たことがない、不思議な風景ができあがる…そんなことを考えながら、ぐるぐると会場を5周くらいしてしまいました。
もう一つ思ったこと。
よく「写真は、つきつめれば光と影だ」なんてことを言う人がいます。たしかにそれはそう。静物の写真はある意味、光と影でほとんど決まってしまう気がする。モノクロ写真の場合はさらにそれを感じます。
で、田所さんの写真を見て思ったのは
「ああ、光と影と、もう一つは“反射”だ…」ということ。
反射もホントは光の一部なんだけど、彼女の写真の中では、ガラスの反射とか、水の反射とか、反射がものすごく上手に使われているんです。とくにショーウィンドウ写真は印象的。普段、反射を消そう消そうとしながら写真を撮っているもので、余計に印象的だったのでした。
最後に、ローアングルの魅力。
缶を置いて撮るというスタイルなので、写真は自然と全てローアングルなのです。そして、4×5のフィルムが缶の中に少し丸めて入っているため、ちょうど超広角レンズで撮ったような、ゆがみが生じるのがまた面白い。
会場で田所美恵子さんご本人とお話することができたのもラッキーでした。
使ってるのは、穴を開けてテープを貼った空き缶(上の写真がそれです)と、ISO100のモノクロフィルム。針穴写真っていうと、30秒とか平気で露光してるのかと思いきや、晴れてる日で日なたで撮った写真であれば、数秒だったりするんだそうです。意外〜。
単に「いいなあ」と思う写真は日頃からたくさんあるけれど、ここで見た作品の数々は、単なるいいなあを完全に超えていました。
ものすごく惹かれただけでなく、「写真ってなんだろう」とか柄にもなく考えてしまった…針穴写真という手段そのものにもものすごく興味を引かれて、私も空き缶針穴写真をやってみたいと真剣に思いました。
会期は5月8日から29日までです。
興味があるかたは&銀座に行くことがあれば、是非是非行ってみてください。小さなギャラリーだし、全部観ても30分もかかりませんから。