ayanologはてな館

主に東京の東側で暮らしている私の日々を、ごはんやおやつの話を中心につづります。ayanoのblogなのでayanolog。夏の間はかき氷専門ブログ「トーキョーウジキントキ」もやってます。2013年10月に、はてなDiaryからHatena Blogへ引っ越してきました。

杉本博司「時間の終わり」@六本木ヒルズ

六本木ヒルズの森美術館でやっている、杉本博司「時間の終わり」の話です。六本木ヒルズmeetupのときに見たものだから、だいぶ時間経っちゃってますけど。

展覧会各種(私の場合は写真展が中心ですが)、私は大抵、一切予習しないで観に行きます。
別に高尚な理由があるわけじゃなくて、単に事前にリサーチするのがめんどくさいだけなんだけど(苦笑)、でも、予備知識なしだから楽しめる楽しみ方っていうのもあるんじゃないかなーとなんとなく思っています。

で、杉本博司
感想は人それぞれだと思うし、好き嫌いも分かれると思うけれど(実際、一緒に見てたT氏は「はぁっ?」って感じだったみたいだし…)、私にはものすごくヒットしました。
なんだろう、理屈じゃなくて、本能的に何かを揺さぶられるの。何も予習していなかったのに、心の中のどこかが反応する感じ。

morning

すごいんですよ。何がスゴイって、作品の質もすごいけど、作品だけじゃなく展示の仕方(見せ方)とか、作品の大きさとかにも圧倒される。写真1点1点が彼の作品なわけだけれど、それだけじゃなく、“「時間の終わり展」が開催されているその空間全体”が彼の作品になっているのです。そういう意味で、ただの写真展じゃない。

変な例えだけれど、前半、箱庭(というか、箱?)のなかに放たれた、アリんこになった気持ちがしました。すごく大きなモノトーンの箱の中に、大きな物体(これもやっぱりモノトーン)がいくつも配置されていて、その中をアリになってウロウロしながら背の高い物体を見上げている気分。色のない広い世界をひたすらうろついている気分というか。

真ん中あたりで、杉本博司へのインタビューがビデオ放映されていますが、そこで、展示の為に内装をすべて変えており、壁の色とか、採光、作品の配置方法まで作品を演出する工夫を凝らしていることなどが明かされています。なるほど、そうだったのか…と妙に納得。

白い世界から黒い世界に投げ込まれ、高周波ノイズのようなBGM(途中でトーンが変わる)に軽く頭痛がしてみたり、海の写真を見ている内になんとも不安な気持ちになったりしながら、前述のインタビュービデオを見て、後半へ。

spiral 3

後半の作品群は、前半のものよりさらに実験的。
ル・コルヴィジェや安藤忠雄といった、現代建築の有名な建物をわざとピントを合わさずに撮って大きく引き延ばした写真などなど。1本映画が放映される中、長時間露光をして時間を閉じこめた劇場写真(一番最後の画像参照)は、写真は見たことあったけれど、意図や撮り方を知らなかったので「ああ!」と思わず声が出そうになってしまった。

一番考えさせられてしまったのは「肖像写真」シリーズ。
フェルメールの絵画を、当時の衣装や光に至るまで写真で再現したり、精巧な蝋人形に絶妙なライティングをして、あたかも本物の人間の肖像写真を撮ったように見せたり…実際に写っているのは蝋人形という虚像であって、虚像を写真によって2次元化かつさらに虚像化している訳だけれど、その結果目に見える写真は、生きている人間にしか見えないという不思議な世界。

昭和天皇のポートレートの横に「これが生きているように見えるのであれば、あなたは生きているという意味をもういちど考え直さなくてはいけない」といったメッセージが書かれていて、本当に考えこんでしまったのでした。

spiral2

六本木ヒルズの森美術館で、1月19日まで。会期中に、なんとかもう一度観に行こうと思っています。今年見た中で一番心に残る企画展でした。詳しい作品の内容については、かえるさんも紹介している、artspaceの記事を読むといいかもです。でも、予備知識なしで観に行ってみるのも手だと思うな。

photo.jpg

こんなに長々と書いたけど、なんだか言いたいことは全然伝わってない気がする。
うーん。悔しいけど。なお、写真は、これを見に行った日に撮った六本木ヒルズです。
モノトーンっぽいものを選んでみました。