ayanologはてな館

主に東京の東側で暮らしている私の日々を、ごはんやおやつの話を中心につづります。ayanoのblogなのでayanolog。夏の間はかき氷専門ブログ「トーキョーウジキントキ」もやってます。2013年10月に、はてなDiaryからHatena Blogへ引っ越してきました。

皇室の名宝- 日本美の華(第1期)@東京国立博物館

10/6から、上野の東京国立博物館「皇室の名宝 - 日本美の華」が始まってます。かなり見逃せない感じなので、印象が薄れないうちに簡単にご紹介します。

  • 第1期「永徳、若冲から大観、松園まで」(10/6〜11/3)
  • 第2期「正倉院宝物と書・絵巻の名品」(11/12〜11/29)

本展は、天皇陛下御即位20年を記念し、皇室に縁の深い貴重な文物を一挙に公開、という展覧会。二期制で、11月頭に全作品が完全に入れ替わります。1-2期のセット券を買うと入場料がけっこう安くなるので、両方行きたい方にはオススメ。

一期は絵画&壺が、二期は正倉院宝物&書が展示の中心になるようです。伊藤若冲の「動植綵絵(どうしょくさいえ)」や酒井抱一「十二ヶ月花鳥図」は前期のみ、また正倉院宝物は後期のみの展示なのでご注意を。公式HPの出品リストはこちら→

さてさて、私が行ってきたのは第一期。若冲、抱一のほか、円山応挙だ狩野永徳葛飾北斎だと普通の展覧会だったらエース級の絵がずらり。実際にこれまでの展覧会で主役を張った絵もいっぱい出ているので、見たことがある絵にもずいぶん再会しました……というか、私はそもそも皇居三の丸尚蔵館で伊藤若冲の「動植綵絵」に出会ったのがきっかけで日本画(というか江戸絵画か)を見るようになったので、三の丸尚蔵館所蔵の作品はけっこう見てるんですよね。

一つ目の展示室の目玉は、狩野永徳「唐獅子図屏風」かな。かなり大きな作品なんですが、なにしろ広い東博・平成館の展示室。普通に展示されちゃってるから凄い^^;;

そして次の部屋がいきなり若冲ルーム。動植綵絵・全30幅が勢揃いです。全部揃って公開されたのは非常に珍しくて、前回は2007年に京都相国寺で開かれた企画展の時だったはず(そのときの話はこちら→)。東京で全部そろって公開されたのはウン十年ぶりだそうです。

相国寺のときほど人、人、人ではなかったけど、それでもやっぱりものすごい混雑。一点一点の細部をじっくり眺めるなんてことはほとんどできなかったです。今回の一番の感想は「30幅全部揃うと圧巻」というのともう一つ、「2006年に皇居に通って見ておいてよかった……」というもの。このときに細部にわたってじっっっっっっっっくり若冲の絵の“変さ”“コッテリ感”を味わっておいてよかったな、と。全部揃うと毒気(?)に当てられるせいか、一つ一つの細部まで目が行き届かなくなるんですよね。皇居に通ってた当時の感想はこちら→///

若冲ルームを抜けると、円山応挙の虎の絵がお出迎え。何回見ても可愛い虎です。これはどう見ても、虎の皮をかぶった猫だよなあ……と、見る度に同じ感想を持つ私であった(笑)。

第一展示室の最後を飾るのは、北斎の西瓜の絵と酒井抱一の「十二ヶ月花鳥図」。あぁぁ、やっぱり好きだ、抱一の描く花鳥図が大好きだ!!と嘆息しながら絵の前をウロウロしてしまいました。どの月もすばらしいけれど、特に大好きなのはまーるい紫陽花と同じくまーるい朝顔の絵。6月と7月ですね。

第二展示室は一転、七宝焼や織物など工芸品が中心の展示です。圧巻は川島織物の「春郊鷹狩・秋庭観楓図壁掛」。ものすごく巨大な織物が2枚で対になっています。巨大なんだけどとにかく緻密。ほんと、嘆息するしかないとはこのこと。

壺は、対になっているものが多いのも印象的でした。すばらしいものばかりだったけど、特に素敵だなあと思ったのは、鈴木長吉「銀製百寿花瓶」。「寿」という字をいろいろな書体で描いた銀の花瓶(これも対)です。ミニチュアがあったら欲しいくらい(笑)

私のオススメは、先に第二展示室を見てしまって、それから第一展示室に戻るという見方。上述の通り、パワーのある絵が勢揃いしているので、絵で疲れてしまって第二展示室まで気力が持たない恐れが……。あと非常に混むので(テレビでも紹介されてるみたいだし、おそらく今後、どんどん混雑はひどくなると思います)、閉館間近とか平日夕方とかを狙うことをオススメします。

以下余談。

展覧会の感想とはちょっと離れるんですが、第一展示室の最後の部屋で、しばし放心していました(混雑で人に酔ったから、というのもある)。抱一の花鳥図は60過ぎてからの作品だし、北斎の西瓜に至っては80超えてからなんですよね。今の60歳や80歳に比べると、当時のその歳は相当なお爺さんだったはず。それでこのすばらしい絵を制作したのかと思うと……人間、年を取ろうとも、何かを成そうとすれば死ぬ間際まで成せるんだとしみじみ思ってしまいました。

というのは最近、「子供がいるわけでもないのだし、私、45歳くらいになったら人生終わってもいいな」とよく思っていたから*1。私が働いているのは非常に変化が激しく流れの速い業界で、年を取っても現場感覚を失わずに一線にいられる自信がない。生きる時間のほとんどを働くことに捧げている今、仕事ができなくなったら(あるいは現場に疎ましがられる存在になったら)、死んでもいいかな、と(親より先に死んではまずいという思いはありますが)。子供を育てているなら、大人になるまでは頑張らなくちゃと思うけど、私には子供はいないし、老いて体の自由がきかなくなったら、周りの人に迷惑をかけなくては生きて行かれない。

でも……と、北斎&抱一の絵を見て思ったのです。歳をとっておばあちゃんになっても、子供の代わりに何かを生み出すことはできるのかもしれない。文章なのかそれともほかの仕事に就いて何かまったく違うものを作るのか、それは分からないけど。子供じゃない何かを生み出し続けるために、死ぬまでもがくのもいいかもしれないと、絵を見ながら少し考えたのでした。


はてさて、「皇室の名宝」第二期は11/12から。通しチケットを買っちゃったから忘れずにいかないとな〜と思っております。詳細はこちらを→

追記:かえるさんも行かれてました!blogはこちら→。あと、展示内容がすばらしくまとまってる、はろるど・わーどさんはこちら→。予習に最適です!

*1:死にたいわけじゃないですよ。けがとか病気とかでもう生きられない、ことになったら、それほど後悔なく「あー、いい人生だったなあ。やることはやったなぁ」って思って死ねそう、という意味