ayanologはてな館

主に東京の東側で暮らしている私の日々を、ごはんやおやつの話を中心につづります。ayanoのblogなのでayanolog。夏の間はかき氷専門ブログ「トーキョーウジキントキ」もやってます。2013年10月に、はてなDiaryからHatena Blogへ引っ越してきました。

2017年にみた映画を振り返る

毎年恒例、(誰にも期待されてないけど)自分的にはこれをやらないと気が済まないという、一年間に見た映画を振り返るエントリです。

2017年の自分の中での映画の感想を一言で言うならば「佳作が多かった」でしょうか。そんなに話題になってない&製作費はそんなにかけてないと思うけど、すごく面白かった、よくできてるという映画をたくさん観られた一年でした。反面、大作で自分的にグッときたものは正直少なめでしたね(それがほぼベスト3になってます)。あとは2016年に比べると、邦画の大ヒットが少なかった気がします。

ここからはまず、自分の中での2017年のベスト3を、そしてそのあとにTwitterでつぶやいた感想を中心に見た映画の感想を並べます。基本的には映画館で見た映画の感想のみ書いています(例外で、今年公開じゃない古い映画を2本入れてます)。

●第3位 「バーフバリ 伝説誕生」

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「バーフバリ 伝説誕生」予告編

 

バーフバリ!バーフバリ!(大興奮) ←見終わったあと、Twitterでこう呟いてましたw いやー、めっぽう面白かったわ~。もっと話題になってもよさそうなものなのに、身の回りで見た人が少なくて残念。インド映画に興味がない人でも、これは見といたほうがいいいと思う。ちなみに私は二回見に行きました。

インドで大ヒットした超大作『バーフバリ』。存在を知ったのが大分遅くて、もう終影と思ってたところを、丸の内TOEIで観られることに気付いて慌てて観てきました。やだもうこれ超絶面白い。絶対映画館で観ないと駄目なやーつ!!全編通して、壮大すぎ、ぶっ飛びすぎな世界観。物理法則を無視した身体能力の主人公が格好良すぎてシビれます♡ その辺のハリウッド超大作より、断然スケール大きくて凄いよ。

かつてここまで特撮&CGバリバリ、出演者多すぎ、お金かけ過ぎなインド映画を観たことあっただろうか…。神話の世界を実写化するスケール、規格外のアクション連発ながら美女のダンスはちゃんと入れてくれる所がボリウッド。インド映画のヒロインが歌って踊るだけでなくアクション(殺陣)ばりばりっていうのも珍しいかも。全面的にエネルギー過剰な見せ場が延々続いたところで突然ブツッと静かに終わって「続きは2016年夏公開」って!日本ではいつ続編やるんだろう。観たい…はやく続きを観たい…!


……と、見た直後は叫んでましたが、まさにいま後編である『バーフバリ 王の凱旋』を映画館でやってますよ!桁違いのエンターテインメント大作、映画館で見るべし。本当に面白いし大作映画ならではの迫力満点なので、「インド映画を見るとじんましんが出る」とかいう人以外には広くあまねくオススメします。

baahubali-movie.com

 

●第2位「ダンケルク

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BD/DVD/デジタル【脱出編】『ダンケルク』12.20リリース / 12.13デジタル先行配信

2位は、クリストファー・ノーランの『ダンケルク』。タイトル通り、"ダンケルクの戦い"を描いた映画ですが……すごく良かった!戦争映画なんだけど、テーマは「脱出」。残虐描写はないけれど、見ている間ずっと半端ない緊張感でした。

ノーランの映画なので、今回もやはり「時間」がキー。海、陸、空と三つに分けた(時間軸も三つ)脚本も技ありでした。ノーランは全力で観客に戦場から脱出する緊張感を味あわせようとします。見る側は兵士の気分でその世界に没入していく。だからハンパない緊張感、なのです。没入感のために効果的に使われているのが「映像」「音楽」。

おそらくダンケルクは、大きなスクリーンと、適切な音響設備がある映画館で見たかどうかで没入感がまったく異なり、そして没入感を味わえなかった人は相当満足度が低いと思われます。なので、私はものすごく面白かったけど、「全然面白くなかった」という感想の人がいることもわかります。
映画好きの友人が誘ってくれたおかげで私は品川のIMAXシアターで観られたのですが、小さいスクリーンだと受ける印象がまるで違うと思います。そういう意味で、「(大スクリーン、というかIMAXの)映画館で見ないとダメ」な作品です。こんなに映画館のハードウェアスペックを意識して映画を見に行ったのはこれが初めてかもしれない。詳しくはこのブログを見てください。→「映画『ダンケルク』は殆どの映画館で上下約40%の映像がカットされる件

もう一つ余談。ダンケルクの戦いとは、第二次世界大戦でドイツ軍に攻められたイギリス兵(&フランス兵)が民間の助けで撤退する話なわけです。当然ドイツ軍は敵なので悪者として描かれるわけですが、どうにもこうにもそれが違和感あるんですよね。だって、日本人的にはドイツ軍、味方だからなぁ……。

 

wwws.warnerbros.co.jp

●第1位「ブレードランナー2049」

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映画『ブレードランナー 2049』予告2

 

「バーフバリ」「ダンケルク」を押さえて、2017年見た映画の中でマイ・ベストは「ブレードランナー2049」でした!

いやぁ…これは控えめに言っても大傑作ですよ。旧「ブレードランナー」を完全に踏まえた上でさらに世界観を膨らませ、2010年代の最高レベルの撮影技術を駆使した美しい映像で描き出す。ああ、すごいものを観てしまった……。実は前作である「ブレードランナー」を見たことがなくて、この映画を見に行く直前にあわててAmazonPrimeで見たため、旧作が頭にちゃんと入っている状態だったのもよかったのかな。初回は寝不足で見に行ったもので、前半ちょっとウトウトしてしまった自分を叱りたいです(二回目は最初から最後までじっくり見ました!)。

本作の主役はライアン・ゴズリング、前作の主役はハリソン・フォードなわけですが、ゴズリングが冒頭からいい演技をしている上に、途中、ハリソン・フォードが出てくるシーンからさらにゴズリングの演技がグッと引っ張り上げられて雰囲気が締まるのがすごく良かった。やっぱりハリソン・フォードって名優なんだな……と妙な感心をしたくらい。

そうそう、旧作(1982年公開)のヒロインであるレイチェルが若く美しい姿のまま登場するのも見どころの一つ。映画を見ながら「えっ、えっ、どうなってるの?」と少なからず混乱したわけですが、ここに種明かしが載っていました。→ 「ブレードランナー 2049」に登場した35年前と同じ姿のレプリカント「レイチェル」登場の裏側は? - GIGAZINE

あと、2049は女優さん達がみんないい味出していたのも印象的。特にホログラムのジョイ、可愛かったなぁ……。レプリカントのKとホログラムのジョイが恋人同士というのも、2017年の今考えると非常に示唆深い設定だな、と。今の技術でいえば、レプリカントがPepper、ジョイがスマートスピーカーAmazon EchoとかGoogle Homeなど)みたいなものなわけですよ。PepperとAmazon Echoが恋人同士で、Pepperが「人間でありたい」と願い、Amazon Echoが「体が欲しい」と思いながら恋人同士だったとしたら……?と考えてみていただければと。 

ブレードランナー」はSF映画史上に残る名作でありますが、一方、ハリソン・フォードといえば「スターウォーズ」シリーズでも主役を務めているわけです。同じSFの名作ではあるけれど、スターウォーズが光ならブレードランナーは闇の作品。周りのみんなが「エピソード8見た?」と盛り上がる中、なぜか私はスターウォーズよりこっちに惹かれてしまうんだよなぁ……。

www.bladerunner2049.jp

 

●2017年のBEST5と言いたいオススメ映画

以下、見た映画の一言感想を並べ……ようかと思ったんですが、今年は本当に佳作がたくさんあって、ベスト3には入らなかったけどベスト5には入れたい、ぜひぜひ人に勧めたい&語りたいと思う映画がたくさんあるのでここで並べておきます。もし近いうちに私に会う人で「コレ観たよ!」という人がいたら、語りましょうw
以下、ベスト5と言いつつ6本も挙げてますが、並びは私の観た順番で、順位付けではないです。どれもとっても面白かった。まだ公開しているorそろそろBlu-ray&DVD化してる作品も多いはずなので、正月休みにいかがですか?

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・『お嬢さん』(写真)http://ojosan.jp/…普段エログロ系は避けてる&韓国映画ってほとんど観ないんですが、めずらしく「これは観ておいた方がいいぞ」と虫の知らせ(?)で見に行ったR-18指定作品。で、感想はというと……いやぁぁぁ、面白かった!観てよかった!確かにエロいわド変態だわで言葉を失うシーンもあるんですが(「一人で観に来てよかった~」と10回くらい思った)、それも差し引いても、いや、それがあるからこそめちゃくちゃ面白かったです。ヒロインのエロかわいさ、メイドとの百合っぽい関係性、全体を通して抑制の効いた映像の美しさ、ツボる人にはものすごくツボるはず。日本統治時代の韓国が舞台ということで、韓国人俳優たちが演じる登場人物が話すちょっと妙というかカタコトの日本語も面白く、日本人的にはそれもお楽しみ。たぶん、この映画を世界で一番楽しめるのは日本人だと思います。で、このへんの要素をすべてひっくるめた大仕掛けのよくできた脚本がまたすばらしい! 大人だから楽しめる作品です。いやー、一人で観て良かった(2回目)。

・『ナイスガイズ!』http://www.niceguys-movie.com/ …面白かった~!!!もう、ずーっと笑いっぱなしだったわー。ライアン・ゴズリングの顔芸(?)が素晴らしすぎたw 「ラッセル・クロウ、こんなにポッチャリさんだったっけ?」と出てきたときには驚いたけど、アクションはキレキレでした。でも、「格好いいわ~!」と惚れ惚れしたのは、実は悪役のマット・ボマー。前髪下ろすの似合うのね♡ 格好いいといえば、出てくる車がどれもこれもカッコいい。1970年代のアメ車ってこんなに格好よかったのか、と驚いた。舞台は1977年のアメリカ、デトロイトモーターショーも出てくるので、車好きの方にはぜひ見てほしいです。娘役のアンゴーリー・ライス(スゴイ名前だ)もめっちゃキュート!

『娘よ』 http://www.musumeyo.com/ …あまり話題になってないけど、これはいい映画だぞ…!一言で言うならばパキスタン版 マッドマックス 怒りのデスロード」。ホントだってば! 部族間の闘争のために幼い娘を長老の妻として差し出さなくてはならなくなった若く美しい母が決死の逃避行。山岳地帯を疾走するパキスタンデコトラが美しい。日本でパキスタン映画公開は初らしく、文芸とかドキュメンタリー的な重さを覚悟してたら、意外にもスリルありの面白さ。荒野を背景に原色を組み合わせたヒロインの衣装も鮮やかに美しく、絵になるシーンが沢山。荒削りな部分もあるけどそれも含めて今観ておくべき映画だと思った。ただ、実話を元にしてると思うと非常に胸が苦しくなる。結婚の意味も知らない少女が老人と結婚させられるという話は現実に今も行われてること。そして「娘よ」の世界では命の価値が安すぎる。女も男も。本当に簡単にポンポン人が死んでいく世界が、2010年代の現実だという現実が辛すぎた…

・『ムーンライト』 http://moonlight-movie.jp/…いい映画だった…静かで美しい映像の中に、実験的な試みが多数仕掛けられて、オーソドックスでいて画期的。面白い。特に印象的だったのは、色彩の美しさ。エンドロールのカラリストとは?と思ったら町山氏の解説を発見。→ 町山智浩 映画『ムーンライト』を語る

いじめられっ子の少年。一人だけ自分を認めてくれる友達を好きになる。大人になって2人は再会、初恋の行方は…と、「ムーンライト」は正に純愛ストーリー。但し主人公は貧民街に暮らす黒人でゲイ、母はヤク中、父親代わりの人物はヤクの売人。設定が変わるだけで、純愛に見えなくなる人は多そうだ。かく言う私も、男性同士のラブシーン(?)はドキッとしたから人のこと言えないけどね。で、この映画。私はすごく好きだけど、万人受けはしないと思う。ヒューマントラストシネマ辺りでやってそうな、インディーズ単館系のこの映画がアカデミー賞をとれたのはやはりトランプへの当てつけだよなぁ。それからそれから、黒人俳優が美しすぎて彫刻のようだった。ツヤッツヤ光ってるし。あんなに筋肉ムキムキで絵に描いたようなマッチョな黒人男性のふと見せる弱気な目とか、演技も良かったな…あと、全然英語が聞き取れなくて我ながら驚いた。あれはアメリカ南部の訛りなのか、黒人訛りなのか…。

『ファウンダー~ハンバーガー帝国の秘密』http://thefounder.jp/ …何の気なしに観に行ったら、めちゃくちゃ面白くてびっくりした映画。"ハンバーガー帝国"の"ファウンダー"、つまりマクドナルドの創業者の話なんだけど、まったく話題になっていなかったのは、マクドナルドが一切この映画のことを黙殺していたから……なのだそう。

以前から不思議に思っていたのです。マクドナルドという名前なのに、なぜ創業者の名前は「レイ・クロック」なのか?マックさんとかドナルドさんじゃないの?と。その謎がこの映画ですべて描かれていました。自己啓発のレコード(本ではないのも面白い)を毎日聴き続け、ビジネスの成功のためならどんな黒いことも辞さないレイ・クロックを、マイケル・キートンがギラギラした感じで演じています。資本主義社会に生きるビジネスパーソンにはみんな観て欲しい、「働く」について考えさせられる作品。気分として、休日よりも平日が合う気がしますよ。映画観てるヒマない、という方は原作本をどうぞ。 → 「成功はゴミ箱の中に レイ・クロック自伝」

・『メッセージhttp://www.bd-dvd.sonypictures.jp/arrival/ ……宇宙船が「ばかうけ」みたいだと話題になったSF映画。柿の種にも似てると思いましたが……(どうでもいい)。宇宙船がばかうけ、宇宙人はタコ、と書くと面白い感じになりそうですが、静かな感動作でありました。ベテラン俳優陣の抑制の効いた演技もよかったなあ。見終わったあとに言葉とかコミュニケーションとか人生とか、柄にもなくいろいろと考えてしましました。見終わったあと感動して原作を衝動買いしたんだけど、ものすごく難解だと聞いてそのまま積ん読になってるんだよね。来年こそ読もう……。

人生はシネマティック!http://jinsei-cinema.jp/ … 邦題、「もう一つのダンケルク」とか付けておけば、絶対もっとヒットしたのに……。何の映画か内容を知らずに見に行ったら、思いがけずダンケルク(上述)の話だったのでした。執筆経験のない女性が、脚本家をすることに。ダンケルクの撤退戦で英国兵士を救った双子の姉妹の話を、戦意高揚プロパガンダ映画として描くべく奮闘するヒロインを描きます。お仕事モノでもあり(編集者・ライターは結構共感ポイント多いと思います)、フェミニズム映画でもあり。映画自体も面白かったんですが、この作品中の重要人物である"残念なイケメン"ことアメリカ人パイロットを演じたジェイク・レイシーが妙に頭に刻みつけられることに……(続く)

・『女神の見えざる手http://miss-sloane.jp/  …で、この映画。凄腕女性ロビイスト(ミス・スローン)の活躍を描いたお話です。激烈な仕事っぷりで眠らないように睡眠抑制剤を飲み、恋愛の代わりにエスコートサービスで男娼を買い……と徹底して私生活を犠牲にして仕事に打ち込むヒロインの前に現れたエスコートボーイ。……ああっ、「人生はシネマティック」の残念なイケメンパイロットじゃないか! 
……と、本編と関係ないところで盛り上がってしまいましたが、映画としてもものすごく面白いです。キャラの立ってるヒロイン、戦略のためなら汚い手も、味方も陥れることもいとわない激しい攻防、そしてストーリーの終盤には「これこそ映画!」というカタルシスが味わえます。オススメ。

『ゲットアウト』 http://getout.jp/ ……面白そうなので、ホラーが苦手なのに耐えて見に行った作品。いやーーー、観て良かった!実に"ヤバイ"映画でした。やばーい、やばいよこれは…(思い出して面白さを反芻中)。観た直後は「何を書いてもネタバレになる&衝撃をうまく言語化できない!多分これ、もう一回見て答え合わせしないとダメなやつ~」と呟いていました。最後まで見終わってストーリーの前半を思い出すと「ああっ!アレはアレの伏線だったのか!」「ああっ、あのセリフの真意はこういうことだったのか!」の嵐。二回目、観たかったなあ。
ところで個人的にすごーーーーーく気になったことが。登場人物が全員、パソコンはSurfaceを使ってるんですよ。「珍しいな」と思いながら見てたんだけど、まあそこまではヨシ。その後気をつけて観ていると、携帯電話が(たぶん)全員Windows Mobileなのです! 「マイクロソフト、この映画に協賛するとは、やるなあ~」と思ってエンドロールをじーっと観ていたんですが、マイクロソフトの文字はナシ。あれは一体なんだったんだろう……。本当に気になってるので誰か真相を知っていたら教えてください。

 ・『彼女がその名を知らない鳥たちhttp://kanotori.com/ ……なんとなく見に行ったら……すごい!登場人物がクズばっかりで誰一人共感できないw さすが沼田まほかる原作。とまあ、それ位共感度0%の映画なのに、見終わったあとの満足度が思いの外高かった。まさに「佳作」。個人的には「ユリゴコロ」より映画としてはこちらのほうが断然好きです。あと、思いの外ベッドシーンが多くて、見ててドギマギした。蒼井優の魔性の女ぶりが堪能できます。『花とアリス』の頃から彼女の出演作は結構見ていて、同じかき氷好きということでなんとなーく親近感も持っているのですが、いやぁ、凄い女優さんになったなぁ…と改めて。顔を真っ黒に塗って怪演してる阿部サダヲも見どころです。それから松坂桃李がエロくて軽いです。あんな口説かれ方したら私なら爆笑するw 後で知ったけど『凶悪』の監督なんですね。監督と役者の力量を堪能した一本。

 

●2017年に観た映画Twitter感想 

 以下、今年観た残りの映画の感想です(ほとんどはTwitterの再掲)。

虐殺器官…私が原作を読んだのは多分もう7~8年前だと思う(2007年発表作品)。当時「こんな小説読んだことない」と衝撃を受けて、「これがデビュー作ってすごいな」と心の底から感心したのを覚えてる。映画は多少駆け足のところもありながらも、かなりボリュームがある原作をきっちり劇場用アニメとして再構成しており、いい映画化だと思いました(実は映画を見たときにすっかり原作の内容を忘れてて、映画鑑賞後に読み返した)。アニメだけど完全に大人向け作品。多分日本以外なら(というかハリウッドなら)、特撮満載の実写でなんとかすると思う。で、この作品を2017年に公開することに何かすごい偶然を感じるわけですよ……伊藤計劃が2007年に描いた世界は、まさに今のアメリカ。世界中でテロが止められず、再びアメリカ至上主義に戻ろうとするトランプのアメリカ。中東に住む市民の大きな不幸よりも、家のソファーでデリバリーしたピザを食べられることの幸せこれ、アメリカでこそ見て欲しいけどなあ。英語版つくって海外でも公開すればいいのになあ……。

エゴン・シーレ 死と乙女』…究極の美青年画家の、究極のゲス話。この映画が日本でも公開されると知ったとき「へぇぇぇぇ、エゴン・シーレの映画なんてやるんだ……確かに究極のゲスだなあ。内容はどう考えても問題作だけどいろいろ大丈夫なんだろうか」と私は呟いたのだけれど、心配していたよりはソフトタッチであった。しかしゲス話であることには変わりない(主演俳優は確かに美形だった)。

『スノーデン』…世界中のメール、SNS、通話(電話)は米国政府に盗聴されているという真実。それを暴いてしまったら……?という話。私自身は「そうかもね。そうだとしても全然驚かないよ」というスタンスだけど、世間的にはびっくりだろうなあ。主演男優はメガネで色白、体も細い、いわば「のび太君」。現代日本ではこの手のタイプの男性はいっぱいいるけど、マッチョ信仰が強いアメリカだと生きづらいだろうな……と思いました。はい。

『ホームレス ニューヨークと寝た男』…元俳優で今カメラマン、時々役者の仕事も。毎日ジムに通って体を鍛えジャグジーに浸かり(荷物をジムのロッカーに置いてある)、知人の住むアパートの屋上で隠れて眠る。格好いいしとてもホームレスには見えない主人公のドキュメンタリー。なかなか感想難しい

プラダを着た悪魔Amazon Prime)…もう10年前の映画なんですねえ…悪魔がメリル・ストリープだったとは!面白いんだけど、面白さのポイントが結構悩ましいかも。ファッション誌の世界でどんどん美しくなっていくアン・ハサウェイの姿は確かに見所なんだけど。あと、マドンナのVogue歌いたくなるね♪

ラ・ラ・ランド…ええと…正直に言うと、何が良いのかさっっぱり分からなかった…。主演の二人は好きだし、音楽も聴いてて心地いいし、一つ一つのシーンは観て楽しいんだけど、これ、映画として何が面白いの…???何か重要な所見落としたのかなぁ。うーむ…(悩)。皆さんどこに感動しているのか考えてるんだがやっぱり分からず。全体的に脚本が説明不足だと思うんだけど…ミュージカルだとセリフはなくて歌で説明とかあるけどそういう問題じゃない。物語終盤のテーマは「夢を追い続けるか諦めるか」であり、「もしあのとき○○な選択をしていれば」と空想するわけだけど、エマは大女優になり、ゴズリンはジャズの店を開いているわけで、夢、叶っちゃってるんだからおかしくない?「ジャズは嫌い」と言っていたヒロインはなぜ豹変したのか、そもそもゴズ氏が弾いてるピアノはジャズか?とか、なんだかモヤモヤするツッコミポイントがいろいろで……。衣装はかわいかったし(特に序盤の原色のワンピはかわいかった)、主役二人のヘタウマな感じ(ミュージカル映画のレベルとしては)の歌&ダンスは嫌いじゃないんだけど。 

『はじまりへの旅』…面白かった!かなりニヤニヤしながら観てたので、周りに感動してたお客さんが多くて「アレ?」と思ったくらいwノーム・チョムスキーの名前をここで聞くとは思わなかったなー。あの家族の教育方針、私は嫌いじゃないけど、あの家の子供に生まれたいかと言われたらやっぱヤダw ヴィゴ・モーテンセンといえば私的には「イースタンプロミス」なので、この映画みたいな髭モジャでむさ苦しい感じだと別人みたい。そして子役たちがみんな演技達者でしかも可愛い!キリスト教圏だと火葬は火炙りの刑と同等だからなーとか、綺麗な灰だなとか変な所に引っかかったり。邦題はあれで良かったのか、とも思ふ。

『わたしは、ダニエル・ブレイク』……舞台はイギリスだけど、日本でも似たようなことは起こってるよな…と思うと見終わったあとズシリと重い気持ちになる。社会派映画だけど、ユーモアも散りばめられてすごく面白いので、まずは観て欲しい、強くお勧めしたい映画。パルムドールはダテじゃないっす。単に行政が悪いでも、デジタル化が悪いでもない。ケイティの追いつめられ方もダニエルの絶望も巧く描かれてる。フードバンクのシーンとか…。一つ一つのエピソードもすごくリアルで、積み重ねて一本の映画になったとき胸に迫る。しかし現実にはもっと悲惨で、人は浅ましかったりするから難しい。

ワンダーウーマン……ヒロインがとにかく美しくて格好いい。マジ眼福。序盤のアマゾネス島をもっと見たい。強くて美しい戦うヒロインは日本人も好きなはず、だってそれ『セーラームーン』の世界でしょ?

『獣道』伊藤沙莉の、伊藤沙莉による、伊藤沙莉のための映画。伊藤沙莉が好きなら絶対見るべき(朝ドラ『ひよっこ』の米屋のさおりちゃんをキレキレで演じていたあの娘です!)。体当たりかつ確かな演技力を堪能できます。ハチャメチャな設定のヒロインだけど説得力ある感じにまとまっているのはたぶん彼女の力量のなせる技。普段ならたぶん観てないタイプの映画なので、勢いで観に行ってよかったなあ。

ユリゴコロ…チケットをいただいたので見に行ったのです。原作が「イヤミスの女王」こと沼田まほころと知らず、覚悟なしで見てしまったのよね……。痛いのやグロいのが苦手な私には前半はほとんど拷問。流血&殺人シーンが続いて辛かった…(涙)。松山ケンイチが出てきてから、急に話が面白くなります。というか、色気のあるマツケンを久しぶりに見たぞw相当減量して役作りしたんじゃないかな…

ブレードランナー…続編『ブレードランナー2049』が日本でも公開になるというので「そういえば前作見たことない……」と今さらながら鑑賞。1982年公開のアメリカ映画で、『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』が原作だったのね……(すみません、そこからして知りませんでした)。舞台は2019年のロサンゼルス。環境破壊で酸性雨が降り注ぐ……という設定なんだけど、街並みが不思議。ビル街のなかに日本の広告が流れていたり(強力わかもと、芸者さん出演)、中国っぽい屋台があったりと、中国と日本を勘違いして混ぜちゃった感じが実に新鮮。さて映画のほうは、人造人間レプリカントが脱走して街にやってくるわけですが、後半はなんだか面白ゾンビ映画みたい、と思いながら見てました。怖いと言うより面白い感じ。そしてレイチェルは、ジョジョに出てきそうな不思議な髪型をしていた……髪を下ろすと美女というより美青年風なのも不思議だった……。あと、レプリカントが良い人すぎる!人間より人間らしいのでは?それにしても、夜景の描写を見て、香港のビクトリアピークからの夜景写真を見た人がどうして「ブレードランナーみたいだね」というのかようやく理解しましたよ。長年の謎が解けたw 

『74歳のペリカンはパンを売る』…浅草・寿で、食パンとロールパンだけを作り続ける大人気のパンやさん「ペリカン」。過去に何回かブログに書いたように、小さいころ私はここのパンを常食していたので思い出の味。そのペリカンパンが映画になると聞いて、何がなんでも見に行くぞ!と意気込んでいたのでした。しかし、ふたを開けてみれば「内容がないよう」とダジャレを言いたくなるようなぬるいドキュメンタリー…製作・監督はいったい何を取材していたんだ、と観終わったあと怒りがこみ上げたほど。結構長い時間をかけて密着していたようなのに、何にも描けてないし、おそらくは映画の主テーマである「なぜペリカンパンは2種類のパンだけでこんなに長く愛され続けているのか?」の答えも出せてない。愛しのペリカンパンが映画になるというのに、お前は一体何を取材していたんだ…!ペリカンが好きなだけに文句は言いたくないが、しかしこれはないわ…と思いました…(悲)。一応、良いとこ探しもしよう。一番説得力があったのは後半出てきた常連のおじさん。「すごい旨い訳じゃない。普通。週に二回は買いにくる」的な発言、あれは納得。一方謎だったのが伊藤まさこ氏。カリスマ主婦界の蒼井優って…w

『パターソン』……スターウォーズのカイロ・レン……じゃなかった、アダム・ドライバーがバスの運転手兼詩人を演じておりました。最後に現れる謎の日本人は永瀬正敏。うーん……すごく評判いい映画なんですけどね……全然ツボらなかったです。残念。

『IT』……ホラー映画苦手で全然観ないんだけど、「大丈夫だから」と言われて観てきました。スタンドバイミーとかグーニーズ的で面白いといえば面白いんだけど、つ、疲れた…orz 怖いより薄気味悪くて見るのツラかったよぅ~。簡単に感想をまとめると、
・主人公の弟可愛すぎてマジ天使
・上級生のイジメが常軌を逸してる
・ニューキッズ・オン・ザ・ブロック!(懐)The CureXTCが流れ、俺得すぎw

ってかんじでしょうかw

 『否定と肯定』……今年一番最後に観たのがこれなのかな?「アウシュビッツホロコーストはなかった」という無茶ぶりの裁判を戦う羽目になるユダヤ系アメリカ人女性歴史学者の話。アウシュビッツの見学シーン(おそらくCG)が胸に迫ります。しかし山場は最後の裁判。アウシュビッツについての裁判をイギリスでやっているというもう何がなんだか分からない話なのだが、裁判するからには勝たなくては!と頑張るわけです。知らなかったけど、イギリスは推定無罪もないし陪審員制度もないんですね。被害者の涙の訴えとかもなしで、ひたすら理詰めで攻防が続くのが面白い。面白いんだけどものすごく地味なので、オススメかと聞かれると答えが難しいという……裁判を描いた映画の醍醐味、という意味でいえば「女神の見えざる手」のほうがカタルシスは断然あるんだけど、個人的にはこういう理詰めな裁判映画も面白いな、と思いました。

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以上、今年公開で観た映画27本でした(何か忘れてるのもありそうだけど……)。なんとか2017年中に書き終わってよかったです。それではみなさん、良いお年を!来年もいろんな映画を観たいです。