ayanologはてな館

主に東京の東側で暮らしている私の日々を、ごはんやおやつの話を中心につづります。ayanoのblogなのでayanolog。夏の間はかき氷専門ブログ「トーキョーウジキントキ」もやってます。2013年10月に、はてなDiaryからHatena Blogへ引っ越してきました。

ドイツ写真の現在


「ドイツ写真の現在――かわりゆく『現実』と向かい合うために」(Zwischen Wirklichkeit und Bild : Positionen deutscher Fotografie der Gegenwart)を、会期終了ギリギリで見てきました。竹橋の東京国立近代美術館。私ったら間抜けなことに、上野だと勘違いしていましたよ…。なんとなく上野公園をあるきながら「あれ?ちょっと待て」と気がついた(^^; まあ、わざわざ上野に行った訳じゃないからいいんですけど。


最近、美術展でも写真展でも、むちゃくちゃ混んでいる中で見ることが多いのです。でもこの「ドイツ写真の現在」は久しぶりにガラガラで、落ち着いて見られました。混んでるとどうしても、じっくり見られないんだよね…。


この企画展は、現代ドイツを代表する10人の写真家の作品を集めたもの。多人数の写真家の写真を集めた企画というと、ちょっと前に写美に観に行った「写真はものの見方をどのように変えてきたか 第4部 −混沌−」のカオスっぷりというか無秩序を思い出さずにいられない私なのですが、こちらはよかった。ちゃんと10人の作家さんたちのカラーが出ていて、企画を考える学芸員さんの狙いが伝わる構成になっていました。やっぱりこういうほうがいいよなあ…。


10人全部書いてるときりないので、印象的だった作品だけ。


「これ、いいなぁ…」と最も思ったのは、アンドレアス・グルスキーAndreas Gursky)。

ゴルフの打ちっ放し、証券取引所、駅といった場所を、広く撮って大きく引き延ばした作品を撮っている人。ものすごく被写体深度が深くて、大きな写真なのに隅々までクッキリハッキリと写っているのがスゴイ。香港の証券取引所の写真が一番面白かった。数字がでかでかと書かれた、おそろいの赤い服を着た人たちがものすごくたくさん働いている写真。こんなにたくさん人がいるのに、でも人間くささがカケラもなくて、人が風景になっちゃっているというなんとも不思議な写真だった。あまりに面白くて、写真にヨレヨレと近寄っていったら、白い線の中にうっかり入ってしまい、学芸員さんにたしなめられてしまった…すいません、わざとじゃないんです…。

証券取引所の写真の次に思わずマジマジと見ちゃったのは、ゴルフの打ちっ放しと、駅の写真。特にゴルフの打ちっ放しの写真は、外国人の目を通した日本の風景ということもあり、「よく知っている、リアルな場所なのに、現実感がなく感じられる」という不思議な感覚に陥りました。

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Andreas Gursky(MoMAの出した写真集)


あとはやっぱり、奇妙な子ども写真のロレッタ・ルックス(Loretta Lux)だなー。

彼女の写真の前に、ベアテ・グーチョウ(Beate Gutschow)という人の写真を見ていたんだけれど、こちらは20枚とか30枚とか、複数の写真をデジタル合成して「理想的かつ普遍的、でもどこにもない風景」を作り上げた作品。実在しない風景なわけだから、本当は不自然さを感じてしかるべきなのに、私はあまり不自然さを感じなかったのでした。「あー、こういうとこありそう」などと思いながら見ていて。
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左がベアテ・グーチョウ、右がロレッタ・ルックス


で、ベアテ・グーチョウの写真には感じなかった不自然さが、ロレッタ・ルックスの写真には充ち満ちていたのです。子どものポートレイトを別途制作した背景とデジタル合成して、細部や色彩を丹念に修正する、という手法で作った写真で、「とても整っているのだけれど強烈に不自然でちょっとブキミ」なのですよ。見ていると不安になる写真……。ほかの作品も見てみたいなあ。


全体的な感想としては「あ、たしかになんかドイツっぽい…」という感じ。いや、ドイツのことよく知らないし、あくまで「イメージ」なのですが。10人の作風はそれぞれに全く違うんですが、でも全体的に生真面目に緻密に撮った(あるいは加工した)写真が多くて、その真面目さが写真を通してこちらに伝わってくる感じがしました。


12月18日までで終わってしまった企画展だけど、見てよかった。ものすごくインパクトがある大型企画ではないけれど、「佳作」と呼ぶにふさわしい、いい企画だったのではないでしょうか(あ、なんか私エラソウ…^^;;)