ayanologはてな館

主に東京の東側で暮らしている私の日々を、ごはんやおやつの話を中心につづります。ayanoのblogなのでayanolog。夏の間はかき氷専門ブログ「トーキョーウジキントキ」もやってます。2013年10月に、はてなDiaryからHatena Blogへ引っ越してきました。

お勧め本×3.5(後編)

昨日に続き、三冊目。
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鷺沢 萠 「F―落第生」 角川文庫

今年の春に亡くなった鷺沢 萠の短編集。面白いのも普通なのも混じってます。人によっていいなと思う話は違うだろうけど、私は「重たい色のコートを脱いで」がよかった。次が「家並みの向こうにある空」かな。

というわけで、「重たい色のコートを脱いで」。この話、主人公の聡美が、女性の雑誌編集者という設定なんですよ(苦笑)。優秀な成績で大学を卒業し、大手総合出版社に入社した聡美は女性誌に配属されるんですが、そこの編集長(こちらも女性)になぜか嫌われてさんざん苦労します。努力すればするほど嫌われる、というループにはまり、優秀なのに、誠実なのに、体を壊すくらい懸命に働くのに、だけどうまくいかない…。

さすが、作家とはつきあいの深い職種だけに、変な勘違いや脚色もなく、編集者の日常が非常に的確に描かれています。
終電orタクシー帰り、スケジュールが遅れたら土日返上は当たり前。恋人のところには眠りに行くだけのようになってしまい「俺の家は簡易宿泊所じゃないんだよ」と言われたり、激務が続くと会社に泊まり込みで、ロクにお風呂も入れず着たきりスズメで、外に出てショーウィンドウに映った自分の姿にはっと気づき「いい若い娘があまりだ──もうそんなに若くないか」と独りごちたりと、もう、的確を通り越して、痛いです。昔、付き合ってた相手に「俺と仕事とどっちが大事なんだ」って言われて、しかも怒らせてふられたことを思い出しちゃいましたよ…アイタタタタタ。

もし「編集者になりたい!」って人がいたら、是非読んで欲しいです。
この中にも出てくるけど、雑誌編集者って、ホントに現業労働なんですよ。
人の都合に振り回されることや、人のために謝ることを気にしない精神構造と、図太さと、マメであることが大事。必要なのは間違いなく、頭の良さじゃない…。なのにどうして入社試験で良い成績を取れた人を採用するのか、非常に疑問です。そんな採用基準で採った新卒の正社員が続くわけないよなあ…。

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ああ、結局暗くなってしまった(^_^;
最後はまだ読んでる途中なんで0.5冊扱い。もうすぐ読み終わりそうなんですけど。
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福岡 賢正隠された風景―死の現場を歩く南方新社

毎日新聞西部版に載っていた記事をまとめた本。第1部がペットの行方(不要になったペットの処分)、第2部が肉をつくる(食肉を作るための屠殺の話)、第3部は遺書を読む(自殺)。扱っているテーマは重いのですが、文字も大きいし一話一話も短いし、読みやすいです。書店では置いてるところがあまりないみたいなので、ネットで注文が早いかな。私が買ったときはBK1でもAmazonでも扱ってなくて、Amazonのユーズドでようやく手に入れたくらいでした(今はAmazonで、新刊の扱いがあります)

私も含めて、現代日本で、とくに都会で暮らす人たちはみんな「死」に目を背けて生きています。要らなくなったペットがどうなっているのか、毎日の食卓に並ぶ鶏肉や豚肉や牛肉は、どうやってできているのか。そういうことは考えなくても毎日快適に暮らせるわけです。

知らなかった現実がたくさんここには描かれているのだけれど、たとえば不要ペットはガス室で殺されるということや、日本でも江戸時代までは犬肉を食べることは当たり前で、しかも「おいしい」と珍重されていたこと、鶏の首は自動カッターで切られていること、などなど…。

私たちが生きていけるのは、動物の死の上になりたっているということ、そして「かわいい」「かわいそう」という言葉と裏腹に、いかに多くの人たちは勝手で残酷で差別的かという現実に気付かせてくれる貴重な本です。

「死」を隠しているから「生」を感じられないんじゃないかとか、「ペット処分は必要悪じゃない、善だ」という筆者の意見にはすごく共感しました。ちょっとまえ、「『どうして人を殺しちゃいけないのか』という問いに答えるのは難しい」という議論になったことがあるんだけど、いまなら「動物を殺すところを一度みてみる、それがだめならこの本を読んで、そして自分の頭で考えろ」って言うだろうな。

たぶん目立って売れる本じゃないと思うけど、一人でもたくさんの人に読んで欲しい。とくに「ペット大好き!」な人には読んで欲しいと思いました…残酷なことを言うようだけど。