岡本太郎の視線@東京都写真美術館
途中で途切れちゃいましたが、岡本太郎meetupの話の続き。南青山の岡本太郎記念
館の次に向かったのは、恵比寿・ガーデンプレイス内にある東京都写真美術館。企画展「岡本太郎の視線」を見てきました。
内容は大きく三部に分かれています。第一部は、岡本太郎がパリにいた頃に交流していた写真家たちの話。マン・レイとかロバート・キャパとかそうそうたるメンバーの名前が並び、彼らの写真を見ることができます。岡本太郎が居たころのパリって、シュールレアリズムのまっただ中だったんですねえ。
第二部は、縄文土器を岡本太郎がどのように撮ったかという話。そして第三部は、芸術新潮に掲載された、岡本太郎が撮った日本各地の写真です。東北の写真が私は面白かったな。岩手の鹿踊りとか、秋田のなまはげとか。特になまはげには、相当氏は興味をそそられたらしく、枚数もたくさん残っています。
…ということが分かるのは、この写真がかなり特殊な展示のされかたをしているから。普通、写真展というのは、写真家が「この1枚!」というのを選び、それだけを現像して引き伸ばして展示するものですが、ここではフィルムロールを現像したそのままが展示されているのですよ。一点を選ぶことも、トリミングをすることもしない、撮ったままの「素」の写真が展示されているのです。
これって、写真撮る人にしてみたらむちゃくちゃ恥ずかしいし覚悟がいること。というか、私だったらそんなの絶対許さない(^^;
もし、「撮ったままのフィルムやらメモリカードやらをそのまんま出しておまえの写真展をしてやる」って言われたら絶対断るだろうなあ。裸で人前に出ろと言われるのと同じくらい恥ずかしいもん、それ。
今回の写真は、岡本太郎の死後、岡本敏子氏の手によって発表されたもので、現像も他の人(だれだったっけな、木村伊兵衛の弟子と書いてあった記憶が)に依頼したものなんですね。そういう特殊な経緯だったことと、岡本太郎自身が写真家ではなかったからこういう展示が可能になったんだろうなあ…などと思いました。
↑太陽の塔と対をなすといわれる壁画「明日への神話」。メキシコで見つかり、修復プロジェクト進行中です。これは青山の記念館で撮ったモノ。右下にあるのは第五福竜丸。マグロを引っ張ってるそうです。すごい絵だ…これ、修復して広島におけたらいいなあと思うのは私だけでしょうか。
ここからは、岡本太郎の写真そのものについての話。
上記のなまはげ写真などを見ていて感じるのは、興味を惹かれた対象に対して、ずんずん迫っていく撮り方をするんだなあということ。対象をアップで撮ることと引き替えに、大胆なトリミングを辞さないんですね。
もう一つ、特徴的と感じたのは、構図の大胆さ。左右にリズミカルに並んでいるかまくらの中にポンポンと歩いている人を配置した写真とか、石段を斜めに撮って、そのど真ん中に老婆、とか。よく言えば大胆、悪く言えば単純な構図の写真が多いような。
この展示の中でも、誰かの発言として「岡本太郎の写真は単純」だったか「面白くない」だかいうのが紹介されています。
…でね。
…で。非常に書きにくいのですが…。
たくさん展示されている岡本太郎の写真を、実は私、「うわー、なんか私が撮りそうな写真だなー…」と思って見ていたのでした。とくに構図に、ものすごく共通点を感じる…。もし同じ物を前にしてカメラを持ったとしたら、きっと私も同じような写真を撮っていると思う(^^;
稀代の芸術家・岡本太郎と、自分の撮る写真が似てるというのはおこがましいのですが、なんとも複雑な気持ちで彼の写真を見ていたのでありました。「面白くない」写真と似ているということを、自分で認めてるんだからいいのか? むーん…。