ayanologはてな館

主に東京の東側で暮らしている私の日々を、ごはんやおやつの話を中心につづります。ayanoのblogなのでayanolog。夏の間はかき氷専門ブログ「トーキョーウジキントキ」もやってます。2013年10月に、はてなDiaryからHatena Blogへ引っ越してきました。

マイケル・ムーア「SiCKO(シッコ)」

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日比谷のシャンテ・シネで観たのは、マイケル・ムーアの「SiCKO(シッコ)」。マイケル・ムーアの映画を観るのは、これが初めてです(「華氏911」、観てないの……)。

西側諸国の中で唯一、国民皆保険制度がないといわれるアメリカの医療保健制度に切り込んだ、コミカルなタッチのドキュメンタリー映画。Sickoって知らない単語だなあ……と思ったら、アメリカの俗語で、病人、精神障害者、倒錯者、変質者、狂人、変人、感染者などという意味なのだそうです。な、なるほど。

異常なことはニュースになるけど、当たり前なことはニュースにならないから、意外と誰でも、自分が住む以外の国の“当たり前”を知らないんですよね。教育制度とか、徴兵制度とか、外国人の友達と話すと「ええーっ!」とびっくりすることが多くて驚きます。で、医療・保険制度というのもこの類の知識の一つ。自分の国以外がどうなってるかなんて、普通は知らないですよね。大抵の人は、自分の国のシステムが普通だと思ってる。

私もアメリカの医療保険なんてまっっったく知らなかったので、この映画の内容は「そうなの!?」って驚きの連続でした。
この映画は、マイケル・ムーアがアメリカ人に向かって「先進国で国民全体が受けられる医療保健制度がないのはアメリカだけだ。この国の医療システムはおかしい、なんとかしようぜ?」って問いかける映画です。フランス、イギリス、キューバといった外国の制度を紹介するのは(外国どころか、最後はグアンタナモ米軍基地まで登場する)、自分の国の制度について改めて考え直すことを促すため。だから他国のシステムは「善」として描かれます。それがイヤだって人もいると思うけど、でも映画の手法としてはそれは仕方ないだろうという気はするので、そこは私はあまり気になりませんでした。

「私」じゃなくて「私たち」でなんとかしよう、というのが保険の考え方。それを“社会主義的”であるとして退けてきたアメリカ。これ以上は長くなるしネタばれになるので避けますが、しかしマイケル・ムーアが「これでいいのか」と描き出すアメリカの姿が、いちいち日本の現在の姿と重なって考えさせられてしまいました。アメリカの話のはずなのに、まったく他人事じゃないのが切ない。

映画を見終わったあとに友達とお茶飲みながら話したんですが、「アメリカのこといえないよね。日本も、変なとこばっかりアメリカに似てきちゃってるよね」とうなずきあっていると、なんとも悲しい気持ちになりましたよ。

ここで描かれてるのは、ある意味日本の未来なわけです。途中、お金を払えない病人を病院が貧民街にタクシーで捨てる、というショッキングなシーンが出てきます。日本は幸いにして健康保健制度が整備されていますが、でも国としては(小泉構造改革の方向性としては)できるだけ小さな政府を目指すべく、軽い制度に持っていきたいわけです。小さい政府はいいけれど、しかし同時にセイフティネットを作らないことには、弱者はどんどん追い込まれていく……。セイフティネットなしの小さな政府の行く末が、この貧民街のシーンだとしたら、日本の未来は暗いなあなどと考えさせられてしまいました。