梅佳代は若き日のアニー・リーボヴィッツかもしれない
映画を見終わったあと、いろんなことを考えていました。「(ヴァニティ・フェアの表紙に代表される)コマーシャル写真と、単身でロックスターのいる現場に潜り込んで撮った写真と、どちらが彼女の代表作なのだろう」とか、「彼女自身に、自分の代表作を選んでもらうとしたらどれを選ぶんだろう」とか。
で、キース・リチャーズが語るアニーについてのコメントを思い出していて、ふと頭に浮かんだのが梅佳代さん。2006年の木村伊兵衛写真賞を受賞した若手写真家です。「うめめ」はかなりヒットしたし、「情熱大陸」に出ていたのを観た方もいるのでは。彼女について紹介されたテキストとしては、私はデジカメWatchのこれが好き→☆
若き日のアニーの特徴として語られる、被写体に溶け込んで撮られていると思わせない(=意識させない)、人には見えない場面が見えていてそこを写真にする、眼がいい、というポイントを列挙していて、連想したのが彼女の名前だったわけです。梅佳代もまさにそういう写真家だから。
大丈夫か?日本、、、
爆笑写真群
細かい突っ込みどころ満載
よく撮ったなぁ...と感心
無敵男子!
男子の母
うめかよおそるべし。これから楽しみ!
お気に入りのアルバムのような
仕事で撮る写真というのには、一定のセオリーというか、定石の「撮り方」があります。ブツ撮りなら光の当て方、角度とか。人撮りならポーズの付け方、表情とか。自分でそれを全て編み出すのは大変なことだけど、師匠について撮り方をマスターすれば、実は場数を踏めば才能がなくてもある程度は撮れます(なんて、アマチュアの私が言うと批判されそうだけども)。
情熱大陸の中で、優香を撮るシーンが出てくるのですが、梅佳代は優香に「こっちおしりむけてー。あのな、おしりとらなあかんのやって。はい、おしり」といいながらグラビア風の写真を撮ります。で、その出来がかなりヒドイ。それは多分、グラビアにはグラビアの写真の作法というのがあるのに、彼女がそれをマスターしていないから。さらにいうなら、「こういうのがグラビアのいい写真」という理解が彼女の頭の中になく、「いい写真を撮ろう」と思っていないからひどい写真ができあがる。
インタビューされる人の素を引き出す写真は、彼女の天性のもの。今は「眼の良さ」勝負で彼女は写真を撮っているわけですが、今後も写真でごはんを食べていこうと思うなら、きっと何らかの「商業写真」を撮らなくてはいけない日がやってくる。
ローリング・ストーン誌でマンネリに陥っていたアニー・リーボヴィッツがビア・フェイトラーに出会って転機を迎えたように、梅佳代にも誰か、師となる人が現れる必要があるのではないか、と勝手ながら思いました。「作り込む写真」「商業写真」に取り組む日が来たら、おそらくその過程で何らかのブレイクスルーがあって、新しい段階の梅佳代写真が生まれるのかもしれないなぁ、と。評論家でもなんでもないのにこんなこと書くのは気が引けるんですが、でも彼女の「眼の良さ」を、「面白い写真」に留めておくのはもったいないなあと思うんですよね……。