ayanologはてな館

主に東京の東側で暮らしている私の日々を、ごはんやおやつの話を中心につづります。ayanoのblogなのでayanolog。夏の間はかき氷専門ブログ「トーキョーウジキントキ」もやってます。2013年10月に、はてなDiaryからHatena Blogへ引っ越してきました。

安田幸弘写真展「星空の散歩道」

 最近、(かなり強い苦手意識がありつつ)意識して撮っているのが夜景写真です。三脚を立てて、カメラをセットして、10秒とか20秒とか(時には1分以上!)長時間シャッターを開いていると、夜なのに空が煌々と明るい、不思議な写真が撮れることがあるんですよね。例えば最近撮った写真だとこんなやつとか。

Sakura - Night shot of RoppongiHills, 02

 自分の目に映っているのとは明らかに違う、不思議な明るさの写真。ある意味禍々しいと思ったりもするけど、あれは面白いよね……なんて話を友達としていたら、「あー、まさにいまそんな写真の写真展をやってるよ。長時間シャッター開けて、夜なのに明るい写真がいっぱい展示されてるよ」と聞いて、行ってきた写真展がコレ。

 安田幸弘写真展「星空の散歩道」(フォトエントランス日比谷で3月31日まで)。写真展のタイトルも調べずに、場所だけ教わって行ったので、たどり着いて看板を見てようやく気づきました。これ、星景写真を集めた写真展じゃん!

星景写真

 星景写真というジャンルの写真をご存じでしょうか。月や星などの天体と、街並みや山のシルエットといった地上の風景を、1枚の写真に閉じ込めるもので、天体写真の1ジャンルです。撮る対象が遠くにあるものなので、フラッシュなんかもちろん届かない。そのために星景写真を撮るためには、カメラを三脚にしっかり据え付けて、長時間露光でかすかな月や星の光をとらえなくてはならないのです。

 展示されている写真はどれもホントにきれい。どれがフィルムカメラでどれがデジカメ撮影なのかな?などと思いながら見ていました。

 印象的だったのは、月の明るさをわざと使った写真が多いこと。星を写す場合、満月が出ていると月の明るさに星が負けてしまうため、新月の日を狙ったり、月が入らない角度で撮ったりすることが多いのです。

 でも、安田さんの写真ではわざと月の明るさ(もしかしたら街の明るさも)を生かした作品が多いのが印象的でした。結果どうなるかというと、夜空に星が出ているのに昼間みたい、みたいな不思議な写真ができあがるのです。「ああ、だから『ロングシャッターで明るく撮る夜景写真』って言ってたのか」と一人納得。例えば、DMに使われていた写真もそうでした。

 “ロングシャッターを生かして、肉眼で見えるのとは違う明るい写真”という意味で一番印象的だったのは、渥美半島で撮った海の写真、2点。岩と空は動いていないのだけれど、水面が霧のように……いや、ちがうなあ。中国の山水画で高山が雲の海から顔を出しているものがありますが、海面があの雲の海のようになっているのです。これはおそらく、相当荒い波が行ったり来たりしているのを、夜、長時間露光して撮ったのだろうなあ……と想像。

 そのほか、北極星を中心にぐるっと回っている北の空の写真と思いきや南の空の写真があったり(つまりそれは南半球まで写真を撮りに行ったということ)、アラスカで撮ったオーロラの写真があったりと、力作がたくさん。私は写真を見ながらしばし「これ撮るの、大変だったろうなあ……」と、会ったことのない安田さんの苦労に思いをはせていたのでした。なぜかというと……


 星がきれいに見えるには、空気がきれいなところへ行った方がいい。また、あまりに街の明かりが明るい&近すぎると、街の風景と星を一緒に写し込むことができないーーそれだけに、星景写真(というか天体写真全般?)撮りには、人里離れた山の中(山の上?)などへ行くことが多いのです。空気がきれいなほうがいいとなれば、冬の夜に撮ることも。そうするとどうなるかというとですね……寒いんですよ。むっちゃくちゃツライんですよ〜(涙)

 どうしてこんな知ったようなことを書いているかというと、以前雑誌の企画で一度だけ、私も星景写真を撮ったことがあるからなんです。夏に乗鞍岳に行ったんですが、ほんとに寒かった。夏なのに、スキーウェア着用じゃないと凍死しそうだったくらい(寒いですよ、と聞いていたのにそれほどと思わず、東京の晩秋くらいの服装で行ったので、ホントに死ぬかと思いました)。

 天体写真は設定が難しいだけに(基本、シャッタースピードも露出も感度もフルマニュアルです)、撮ってすぐ確認できるデジカメだとかなり撮りやすくなるジャンルの写真だと思います。私もそのときはデジカメで撮った(たしかEOS 10Dだったかな)のですが、それでも数時間ねばってまともに撮れたのはたった1枚だけ(それもレタッチしまくって辛うじて「一応見られる」レベルにごまかした写真)。

 星景写真を撮るのは寒くてしんどい!ロケハンも大変!それを知っているだけに、ギャラリーにぐるりと張りめぐらされた星空の写真たちを見ていると感慨深かったのです。


 こうして写真展ですてきな写真をたくさん見ると、「星景写真、いいなー」って思うんですけどね。でも私は根性なしだから、たぶんもう撮らないと思います……天体写真を撮る人は本当にスゴイと思うです、ハイ。

安田幸弘「星空の散歩道」→