土門拳に逢いに行く
JRの週末フリー切符で、山形へ行ってきました。今回の一番の目的は酒田の土門拳記念館に行くこと。
たしかもう10年くらい前。まだ、写真を撮ることが好きでもなんでもなかったころに新聞で見た、忘れられない1枚の写真があります。何かを上に載せているように、両手を合わせて、手を開いているところをアップで撮ったモノクロ写真。綺麗な手じゃない、労働する男性の手。ススか泥で汚れて、がさがさの手です。その写真の横に、“土門拳”という名がありました。変わった名前だと思ったけど、特に写真に興味があったわけでもないので、そのままずっと忘れていました。
それから私は何度も土門拳に出会いました。炭坑に暮らす貧しい子どもの写真、文楽の三味線を弾いている人の手のアップ……「この写真、気になる」、そう思ってクレジットを見ると「土門拳」と書いてある。そんな経験を何回かするうちに、土門拳という人の名が忘れられなくなり、他の写真も見たくなったのです。
さて、前振りが長くなりました。その土門拳の記念館である「酒田市写真展示館」が、彼の故郷である山形県酒田市にあります。写真専門の美術館としては日本初なのだそう。酒田市の中心からはちょっと離れたところにあって、記念館の前には池があり、鴨が泳いでいます。ちなみに建物の設計は、土門拳と公有のあった谷口吉郎の長男である谷口吉生、中庭にある彫刻はイサム・ノグチが手がけています(もしかしたら中庭もそうかも)。
館内には当然、土門拳の写真が展示されています。収蔵作品は4つに分けられていて、順番の展示。最低4回行かないと、収蔵作品は全部見られないようになっています。私がここに行くのは2回目。ちゃんと確認しないで出かけたのだけれど、前回見たのとは違う内容でした。
展示の仕方がゆったりとしているので、それなりに多い点数の写真が展示してあるわりには窮屈な感じがしません(そもそも敷地からして決して狭くはないと思いますが)。古寺巡礼シリーズ、東寺といった代表作を中心に、たっぷり堪能しました。ほとんどの写真は写真集で見たことがあるんだけど、でもやっぱり、大きくひきのばされた写真を見るのはひと味もふた味も違うなあ、と。
最後の小部屋に展示されていた、スナップ写真の数々がさりげなくよかったです。雪の積もったもみじ、玉砂利の上に散った牡丹の花などなど。彼自身はこの手の風景スナップを撮りにわざわざ出かけることはほとんどなく、それこそお寺を撮りに行ったときにふと立ち寄ってシャッターを切ったものばかりらしいのですが、でも、構図の作り方に「らしさ」がものすごく出ている気がして面白かった。
記念館で買ってきた本がとても面白かったので、それについてはまた別項で。
酒田市写真展示館/土門拳記念館 (WEB)
山形県酒田市飯森山2丁目13番地(飯森山公園内)
JR羽越本線酒田駅からるんるんバス