ayanologはてな館

主に東京の東側で暮らしている私の日々を、ごはんやおやつの話を中心につづります。ayanoのblogなのでayanolog。夏の間はかき氷専門ブログ「トーキョーウジキントキ」もやってます。2013年10月に、はてなDiaryからHatena Blogへ引っ越してきました。

映画「隠された記憶」

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映画「隠された記憶」を観てきました。
渋谷ユーロスペースにて、終了日未定。

美しく知的な妻アンと愛らしい息子ピエロ、仲の良い友人たちに恵まれて、幸せな生活を送っている、テレビ局の人気キャスターのジョルジュ。

ある日、不気味な落書きと共に1本のビデオが送られてきた。ビデオの中身は、隠しカメラで撮影されたジョルジュ一家の日常生活。

ビデオはその後も何度も送られてきて、しかもその内容は徐々によりプライベートな内容になっていく。不安と恐怖におびえ、徐々に家族の中に亀裂が入り、広がっていく。

ジョルジュが思い出したのは、子どもの頃のある出来事。その“無邪気な悪意”が引き起こした現実は?そしてビデオを送ってきた犯人は……?

「隠された記憶」では一切BGMが使われていません。過度な演出もなく、静かに劇は進んでいきます。でも退屈するような内容では全くないです。ミヒャエル・ハネケ監督の映画って初めて観たのですが、怖いです。ホラー映画とは違う恐さ。痛い。でも目を背けられない。

先日観た「クラッシュ」(http://www.crash-movie.jp/)に続き、この映画でも都市に住む豊かな欧米人と貧しい移民、その間にある経済格差や異文化間の衝突が一つのテーマになっています。クラッシュを観たとき、「ずいぶんハリウッド的ではない映画だ」と思ったけれど、ハリウッド的ではないけどものすごくアメリカ的だし、アメリカ人でなければあれは撮れない映画だったんだなと「隠された記憶」を観て気づきました。なぜなら、隠された記憶はものすごくヨーロッパ的映画だから。どちらも今日、“現代社会にある問題点”“都市で生活を送る中で起こりうる恐怖、悲劇”を描いている点で共通していると思います。東京でも同じ事は起こりうる。

この映画のもう一つのテーマは「やましさ(または罪の意識)とは何か?そして我々はそれにどう対処すべきか?」ということ。それは監督から観客へ投げかけられた問いでもあります。見終わったあと、しばらく考え込まずにはいられませんでした。

映画後半、とんでもないシーンがあります。私、思わず声が(悲鳴が)出てしまいました…でも、いわゆる「ただ観客を驚かせたいだけ」じゃなくて、ちゃんと必然性があるので仕方ない。これが例えばアレックスなんかだと、単にショッキングなシーンを挟みたいだけじゃないか、と思ってしまうわけですが…って、これくらいならネタバレにはならないよね。

チラシには「衝撃のラストカット、その真実の瞬間を見逃してはいけない」とあります。1回見て「すっきり謎が解けた!」と思う方はまずいらっしゃらないと思いますが、ラストカットは注意深く見てくださいね。終わった直後はよく私も分からなくて、何度もストーリーを巻き戻して考えて、「うわっ、この監督頭良い……」と唸ってしまいました、ホント。

見終わったあとに「面白かったね」と笑顔になるような映画ではまったくないですが、「自分が今スクリーンで見たものはなんだったのか?」と考え、観客同士できっと話したくなるはずの映画です。ハリウッド映画好きにはオススメしませんが、見るべき価値のある作品だと思います。

第58回カンヌ国際映画祭 監督賞・国際批評家賞・人道賞 受賞
第18回ヨーロッパ映画賞 作品賞・監督賞・主演男優賞・脚本賞・編集賞 受賞
フランス映画祭2006出品作品
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